映画『ホテル・ムンバイ』は、2008年に実際起きたムンバイ同時多発テロを題材にした実話映画です。無差別テロの凄惨さ、勇敢なホテルマンたち、当時の人権問題……さらにテロリスト側の視点まで丁寧に描写されました。
作中の凄まじい臨場感ゆえに、どこまで実話なのか気になった方も多いはずです。この記事では『ホテル・ムンバイ』がどこまで実話なのかを解説します。実話部分の紹介は映画のネタバレを含みますので、鑑賞後の理解を深めるためにお役立てください。
目次
1.映画『ホテル・ムンバイ』はどんな映画?

主人公:主演 | アルジュン(デブ・パテル) |
監督 | アンソニー・マラス |
脚本 | ジョン・コリー、アンソニー・マラス |
映画『ホテル・ムンバイ』は、2018年制作のオーストラリア・インド・アメリカの合作映画。ノンフィクション映画として、ムンバイ同時多発テロをもとに制作されました。
(1)映画『ホテル・ムンバイ』の口コミ・評価は?
日本の映画口コミサイトだけでなく、アメリカの映画批評サイトでも高評価が多いです。
「映画で実際の恐怖を描くのは人によっては搾取的と感じるが、映画作品としてうまくドラマ化している」と総評がなされました。リアリズムと映画作品としての見応えを両立しています。
(2)映画『ホテル・ムンバイ』の主要キャスト
役名 | 俳優・女優名 |
アルジュン | デブ・パテル |
デヴィッド | アーミー・ハマー |
ザーラ・カシャニ | ナザニン・ボニアディ |
サリー | ティルダ・コブハム=ハーヴェイ |
ヘマント・オベロイ料理長 | アヌパム・カー |
主演のデブ・パテルはイギリス出身ですが、インド人の両親から生まれたインド系イギリス人。本作の他にも『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』で好演しています。2016年に公開された『LION ライオン 25年目のただいま』でアカデミー助演男優賞にノミネートされるなど、現在注目の俳優です。
(3)映画『ホテル・ムンバイ』の簡単なあらすじ

舟でバックパッカー風の若者・テロリストがムンバイに到着します。リュックに隠していた銃をトイレで組み立てると、駅で無差別殺戮を始めます。
テロ行為は、ムンバイの数か所で行われ、五つ星ホテルタージマハル・ホテルにまで及びます。オベロイ料理長をリーダーに、アルジュンをはじめとするホテル従業員たちがお客様を守る行動を開始します。
2.実際起きたムンバイ同時多発テロ(2008年)の概要

ここでは、2008年に実際に起きたムンバイ同時多発テロの概要を紹介します。
発生日時 | 2008年11月26日~2008年11月29日 |
場所 | インド マハーラーシュトラ州ムンバイ |
死者数 | 165人(日本人1人を含む) |
負傷者 | 304人(日本人1人を含む) |
容疑者 | イスラム過激派 |
ムンバイ同時多発テロは、その甚大な被害からインド史上最悪のテロ事件またはインドの9.11とも呼ばれます。
(1)ムンバイ同時多発テロが起きた場所は?
テロ首謀者は、外国人を標的にしました。被害を受けたのは、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅、2つの五つ星ホテル(オベロイ・トライデント、タージマハル・ホテル)、レオポルド・カフェ、カマ病院、ムンバイ・ハバド・ハウス、メトロ・アドラブ映画館の8か所です。(参考資料:Wikipedia「ムンバイ同時多発テロ」)
(2)タージマハル・ホテルでのテロで生存者は?
凄惨なテロ行為が繰り広げられたタージマハル・ホテルですが、40~50人の宿泊客と欧州議会の英国代表サジャド・カリム氏の生存が確認されています。(参考資料:AFP BB News「ムンバイ同時襲撃事件、生存者が語る恐怖の瞬間」)
3.映画『ホテル・ムンバイ』で実話の部分

映画『ホテル・ムンバイ』で描かれたムンバイ同時多発テロは、現実に起きました。作中の凄まじい臨場感は、恐怖そのもの。ここでは、映画と実際の事件で実話と確証できた箇所を紹介します。
(1)タージマハル・ホテルは実在する
映画『ホテル・ムンバイ』でテロが行われたタージマハル・ホテルは実在します。作中で描写されたように、豪華絢爛な五つ星ホテルです。
(2)ザーラやワシリーは実在する?
登場人物で明確に実在するのは、オベロイ料理長のみです。他の登場人物は完全に架空の人物とは言い切れないものの、アルジュンやザーラ、ワシリーといった人物は生存者の証言を組み合わせて作られた人物です。
映画『ホテル・ムンバイ』は制作にあたって入念なリサーチを行っており、現地で生存者へインタビューや事件の記録からテロリストに関する情報も読み込みました。実話映画としてのリアリティにこだわっています。
(3)テロリストたちの行動は?
映画『ホテル・ムンバイ』ではテロリストの行動も再現されており、実際の事件でも映画の冒頭と同じく、小舟を利用しています。怪しく感じた地元漁師がテロリスト達に職業を尋ねると学生と答えたという記録も。不審に思った地元漁師が通報したものの、警察の対応はなかったそうです。
(4)特殊部隊が遅かった?
テロ発生から60時間経過した11月29日午前8時、特殊部隊がタージマハル・ホテルでの任務を完了させます。
映画で描かれたように、実際の事件でも特殊部隊の到着はとても遅かった模様。理由は映画と同じく、ニューデリーからムンバイまでの距離でした。
また、特殊部隊の到着前に突入した地元警察がテロリストによって、射殺されたのも事実です。特殊部隊の隊長を含む3名の警察幹部が亡くなっています。
4.タージマハル・ホテルの現在は?
テロ攻撃を受けたタージマハル・ホテルですが、2025年現在も営業中です。ここでは、現在のタージマハル・ホテルを紹介します。
(1)テロ攻撃を受けた直後のタージマハル・ホテルは営業停止した
ムンバイ同時多発テロ直後は、放火や銃撃、爆破などによる建物損傷で営業停止していました。
事件から3か月後に修復を終えてリニューアルオープン。映画『ホテル・ムンバイ』のエンディングはリニューアルオープン時の記録映像です。実在のオベロイ料理長がリニューアルオープンの式典に出席しています。実在のオベロイ料理長は、式典でテロに屈さない意思を表明しました。
(2)タージマハル・ホテルに宿泊料金は?
タージマハル・ホテルは、おおよそ1泊70,000円~(参考資料:Booking.com)。ムンバイ同時多発テロ以降、入念なセキュリティチェックが行われています。街の治安も格段に向上しているそうです。
映画『ホテル・ムンバイ』のタージマハル・ホテル(Taj Mahal Palace and Tower)は、ムンバイにあります。インド内には似た名前のホテルがあるので、訪れる場合にはお気をつけください。
5.まとめ:映画『ホテル・ムンバイ』の名も無き英雄たちは確かに実在する!

映画『ホテル・ムンバイ』では、凄惨なテロ事件がリアルに描かれ、さらに社会問題も細やかに描かれています。
映画作品としての評価が高さだけでなく、商業的にも成功を収めた映画『ホテル・ムンバイ』。しかし、映画作品向けに物語を盛り込んだわけではなく、リアルを追求した作品でした。
本作を見返すと、無差別テロの凄惨さや当時の人権問題など、様々な模様が感じられるでしょう。