『きっと、うまくいく』にはどんな名言がある?
『きっと、うまくいく』はコメディやロマンス、ミステリーまで組み込まれた名作インド映画。世界的に人気を博したうえに、映画著名人にもファンが多い映画です。有名なスピルバーグ監督も本作について「3回鑑賞したよ!」とコメントを残しています。
『きっと、うまくいく』が他作品と一線を画すのは、面白い一方でインド社会問題に切り込んだ社会派映画でもある点です。この記事では、『きっと、うまくいく』の名言で表現されたインドの社会問題を紹介します。作品の理解を深めるために、お役立てください。
目次
映画『きっと、うまくいく』ってどんな映画?
主人公・主演 | ランチョル(アーミル・カーン) |
監督 | ラージクマール・ヒラーニ |
脚本 | ラージクマール・ヒラーニ |
『きっと、うまくいく』は2009年に公開されたインド映画です。コメディやロマンスといったいかにもインド映画らしい要素を持ち合わせながらも、インド社会問題に切り込むシリアスな表現も備えています。
上映時間の長さや歌・ダンスなどのインド映画らしさも備えますが、癖は控えめです。普段好んでインド映画を鑑賞しない方も楽しく鑑賞しやすい作品です!
映画『きっと、うまくいく』の評価
『きっと、うまくいく』は2009年時点でインド映画歴代興行収入1位を獲得しました。インドアカデミー賞も受賞しています。人気はインドだけに留まらず、日本で公開された2013年にはYahoo映画作品レビューランキングで1位を獲得。さらに、スピルバーグ監督やブラッド・ピットといった映画界著名人も絶賛しています。
【ネタバレなし】映画『きっと、うまくいく』の簡単なあらすじ
舞台は、インドのエリート大学ICE。主人公のランチョル、それからファランとラジューの3人は、仲の良い友達になります。理不尽な上級生やヴィールー学長、厳しい教師など、たくさんの敵に屈せず学園生活を謳歌します。
映画『きっと、うまくいく』の主要キャスト
役名 | キャスト名 |
ランチョルダース・シャマルダース・チャンチャル(ランチョル) | アーミル・カーン |
ファルハーン・クレイシー | R・マドハヴァン |
ラージュー・ラストーギー | シャルマン・ジョーシー |
ピア・サハスラブッデー | カリーナ・カプール |
ランチョルダース・シャマルダース・チャンチャルは、主人公です。作中では「ランチョル」と呼ばれています。自由奔放で楽しさを追求する性格でありながらも、確固たる信念を持つ青年です。天才肌で発明が得意。口癖は「Aal Izz Well」(うまくいく)。
アーミル・カーンは44歳で大学生を演じた
ランチョルを演じたアーミル・カーンは、インドの国民的俳優です。彼の特徴は、完璧な役作り。本作では大学生を演じてますが、出演当時44歳でした。若々しい大学生を演じるために、肉体改造に励んだそうです。
映画『きっと、うまくいく』で表現されたインドの社会問題とは
『きっと、うまくいく』の上映時間は2時間 51分。日本で一般的に鑑賞される映画作品と比べると、やや長い上映時間です。しかし、面白さと深いメッセージ性を感じれば案外あっという間です。
ここで紹介するのは『きっとうまくいく』で表現されたインドの社会問題です。本編のネタバレを若干含むため、鑑賞後にご覧ください。
インドの社会問題「若者の自殺問題」
序盤に、留年が確定した学生が自殺します。その際、ランチョルは学長が学生を殺したと詰め寄りました。
現実のインドも学生の自殺が問題になっている
実際のインドも、18~30歳までの自殺が深刻です。自殺の原因はなんと教育。勉強や受験の競争社会で心が病む若者が後を絶ちません。
インドは年7~8%の高い経済成長を続ける一方、国民の4割超が20歳未満で、毎月約100万人が労働市場に加わる。若者の就職難が深刻な社会問題になっている。
引用元:「朝日新聞」インド工科大はカーストを乗り越えるパスポート 苛烈な競争、自殺相次ぐ
『きっと、うまくいく』は実話ではないけど実体験からテーマを得た
ラージクマール・ヒラーニ監督は『きっと、うまくいく』のテーマについて、教育がもたらすストレスだと語っています。監督の人生で最も大変だったのは、日本でいう高3年生の時。テストの結果を気にして夜頻繫に目が覚めたとのこと。『きっと、うまくいく』は、実体験での苦労も盛り込まれています。
若者が感じている「競争社会のプレッシャー」
物語の中心になる3人組にも、激しい貧富の差がありました。最も貧乏なのは、ラージュー。稼ぎ頭だった父は脳卒中で半身不随、母は仕事と家庭に疲れ切ってました。彼の実家が映る時だけモノクロ映像になります。
ラージューの実家だけが特別貧乏なわけではなく、世界的に見てもインドは貧困率が高いです。
人口13億人に対して貧困率が13.4%。
インドには貧困者層が多数存在することを示しています。
引用元:World Bank「世界の貧困に関するデータ」
学生はみんな必死です。貧乏な家出身の学生は、自身と家族貧乏から脱出したいために。裕福な家出身の学生は、家族の期待を背負ってます。ファルハーンがランチョーに「僕らにとって人生は競争」「必死で走らないと蹴落とされる」言いましたが、これらの言葉はすべてインドの競争社会で揉まれる若者の代弁です。
カースト制度の名残が垣間見える「厳しい上下関係」
『きっと、うまくいく』では、入学早々先輩たちから洗礼を受けるシーンがあります。いわば、立場が上の者が下の者をぞんざいに扱うシーンです。
スクールカーストの語源にもなっているカースト制度は、紀元前1500年前から1950年くらいまで国のルールとして存在しました。
インドで下の階級を持つ者が豊かな生活をするには、まずは学業で良い成績を収めるしかないと考えられています。特に中流階級の親は子どもに、手堅い職である医者かエンジニアになることを強く望むのが一般的。ファルハーンのように、自身の夢よりも親の事情を優先する若者は珍しくありません。
映画『きっと、うまくいく』ランチョルの名言
映画『きっと、うまくいく』には、人生をテーマにした名言がたくさん登場します。それでも「がんばれとは言わない」のがポイントです。ポジティブな気持ちになれる名言をご覧ください。
成功を求めて勉強してはいけない。成功の背中を決して追うな。美徳に従えば成功は自ずとついてくるものだ
将来に悩むラージューにランチョルが言いました。吹替だと「成功を追うな まずは実力をつけること。そうすれば成功はついてくる」と言っています。ラージューと同じ将来に対する悩みを持つ人は、多いはずです。
ランチョルは自身の好きな発明を極めた結果、最後は小学校で子どもに科学や工学を教えてました。好きな仕事をやっている時点で既に幸せかもしれませんが、世界的に有名な科学者にもなっています。
目標や成功を追うのは決して悪いことではありません。しかし、自信は実力からやってきます。そして、自信は自分が納得できた行いでしか得られないモノです。
動物が好きなのになぜ機械と結婚するんだ
親が望むからエンジニアになろうとしたファルハーンに対して、ランチョルが言いました。ファルハーンに自分の人生を生きて欲しい気持ちからの言葉です。また、発明が好きなランチョルからすれば、ある意味生半可な気持ちでエンジニアになろうとするファルハーンが許せない気持ちもあったのかもしれません。
人生の時間で大きな割合を占める仕事は、もはや結婚です。仕事は結婚と同じように相性も重要。
終盤のファルハーンは、写真集を何冊も出版する動物の写真家になっています。もし、親に言われるがままにエンジニアになっていたら手に入らなかった未来でした。
臆病になった時は胸に手をかざしてこの言葉を言うんだ。“”Aal Izz Well”(きっとうまくいく!)
「Aal Izz Well(アール・イーズ・ウェル)」は、作中で度々登場する言葉です。ランチョルが困難と対面した時に唱えています。
人生を過ごしているとさまざまな困難が降りかかりますが、何をするにも意思が必要です。まずは口にしてみると、うまくいくかもしれないですね。
『きっと、うまくいく』の英語版タイトルは『3idiots』
Aal Izz Wellは日本語できっとうまくいくと訳されていますが、英語版のタイトルは3idiotsです。
深いメッセージが込められた『きっと、うまくいく』を鑑賞してみよう!
『きっと、うまくいく』には、コメディとして面白いだけでなくインドの社会問題に対するメッセージも込められています。公開されてから10年以上経過しましたが、現在も人気です。理由は、多くの人に刺さる映画だからではないでしょうか。
破天荒さのなかにも自身の人生を生きる大切さを説いた『きっと、うまくいく』を鑑賞してみましょう!